・・・・・・・・?

何だかふわふわ体が浮いてるような…

それに暖かい……










眩しい…。
あれ?私、何時部屋に戻ってきたんだろう。記憶がないんだけどな…。
たしか、兵士の皆さんにお酒飲まされすぎて、凌統様と目が合って…。
それからの記憶がないや。

自分で何時の間にか戻ってきたのかな?


ばたんっ!

扉が物凄い音を立て開くと同時に何かが飛び出してきた。

!!起きろって!今日お前を皆に紹介すんだから!!」

「兄様!おはようございます。兄様にしては随分早いですね」

「あったりまえよ!可愛い妹を皆に紹介できるんだ!二日酔いなんかに
負けてらんねぇ!!」

ガッツポーズをする甘寧にそれなら昨日の宴の前に紹介してほしかった。
と突っ込んでみるが口には出さなかった。

「早く用意しろよ!部屋の外でまってるからな」

「は、はい!」

急にそんな事言われても…。
何を着たらいいかわからないし。…とりあえず武装していけばいいかな。




「毎朝ここで朝会ってのをやってんだ。まぁ俺は滅多に来ねえけどな!」

そう言って豪快に笑う甘寧は、目の前に顔なじみの奴が居る事に気が付き
また、にぃっと笑った。
甘寧はなるべく音を立てないように背後に近づくと急に叫んだ。

「わっ!!!」

「ぅわっ!!」

いきなりの後ろからの大声に相手も大声で驚き叫んでしまった。
振り返ると甘寧に食ってかかる。

「甘寧殿!!朝っぱらから何なんですか!本当に驚いたじゃありませんか」

「悪りぃ悪りぃ。お前をからかうの面白いんだよなぁ」

「人で遊ばないでください!…しかし、甘寧殿が朝会に出席するとは珍しいですね」

甘寧はにやっと笑うと隣りに居るを親指で指差した。

「俺の妹だ。こいつを皆に紹介しようと思ってな」

自慢気にいう甘寧をほったらかして青年はにっこりとに微笑んだ。

これで二度目だ。



青年は、いや少年と言ってもいいくらい幼い笑顔を見せた。
赤の帽子に赤の燕尾服。何故かお腹が開いている。
そう、正体は陸遜。


「やっぱり甘寧殿の妹君でしたか!昨日ちょっと見ましたよね?
私は陸遜、字を伯言といいます」

「は、はじめまして!と申します。あの、いつも兄がお世話になってます!」

「…っぷ」

「へ?」

「あははははっ!ご、御免なさい!いや、甘寧殿の妹君がこんなに出来た方なんて」

その言葉に反応したのか甘寧が割って入った。

「一寸待て陸遜!其れは俺が駄目な人間って言いたいのか?あ?」

「さぁ、如何でしょう?ご自分の胸に聞いてみたらどうです?」

楽しそうに言い合う二人にもつられて笑った。
とそこへ、朝会が始まります。との文官の声に三人は慌てて大広間へ駆けて行った。






「……と言うわけで、今日の朝会は終了とする」

呉の君主、孫堅が終了を伝えた後、先程までの真剣な表情から一変し爽やかに微笑んだ。

「と、皆に紹介しなければならぬ者がいる。甘寧!!」
「はっ!!」

甘寧はがたん!と勢い良く立ち上がると妹の手を引いて広間の中央へずしずしと歩いていった。
皆の視線が一斉にに浴びせられる。


ひゃ〜、み、皆見てるよ…。兄様何もそんな闊歩していく事ないのにぃ…。

ごほん!!と大きな咳払いを一つして、甘寧はを自分の前にずいっと出した。

「あ〜、知ってる奴もいるかもしんねぇけどこいつは俺の妹でってんだ!!
一寸前に呉に来てから俺の下で武将として働いている。皆よろしく頼むぜ!!!!」

簡単すぎてめちゃくちゃな紹介だった。でも、兄様らしいと密かに笑う。

「ほら、お前も!自分で自己紹介しろ!」

「は、はい!…えっと、甘寧の妹でといいます。武芸はまだまだ未熟ですが
これから精進して磨かせていただきたいと思います。どうか宜しくおねがいします!」

ぶんっと効果音がつくほど勢い良く頭を下げた
孫堅が爽やかに笑い、面をあげてくれといった。

「うむ。我々孫呉の為に頑張ってくれよ!してよ。どうして呉に来る事になった?」

孫堅の質問に答えようと口を開いた瞬間、甘寧がまた割って入った。

「そうだ!お前どうしてここに来たんだ!?そういえば俺聞いてなかったぜ!!」

皆が呆れた顔で甘寧を見ている。それにむっとしてがんをとばす甘寧。

「あ…えっと、兄様の後を追ってきたのと、お国の為に少しでも立ちたかったからです」

「そうか。お前の武勇は甘寧と、…凌統から聞いている。きっと役に立ってくれるだろう。
宜しく頼むぞ!」

孫堅が直々に宜しく頼むといってくださっているのに、それには答えずは辺りを見回した。

凌統様が…?

凌統は右の列の陸遜と太史慈の間にいた。
が凌統をみると、凌統はあからさまにの視線を避けるように俯いた。

「…?…あぁ、何故凌統がお主の武勇を知っているかが気になるのか?凌統、話してやれ」

「……こないだの戦で…俺を助けてくれただろ。…それを殿に報告しただけだよ」

凌統は耳の後ろを掻きながらとは視線を合わせずにいう。
と、そこで甘寧が凌統の傍まで行くと思いっきり目の前の机を叩いた。
額には青筋を立てている。皆はぎょっとして甘寧を見守った。
凌統は平気な顔でうざそうに甘寧を見上げているだけだ。

「てめぇ!感謝してんならもっと気持ちを込めていったら如何なんだ!あぁ!?」

「……おたくには関係ないことだろ。黙ってろ」

「何だとてめぇ!!は俺の妹だ!これが関係ないってのか!」

「兄様、やめて!」

「ふぅん…麗しい兄妹愛ですか。勝手にやってな」

凌統は立ち上がるとひらひらと手を振りながら大広間を出て行った。
甘寧は飛び掛ろうとしたが、流石に陸遜や呂蒙に止められていた。

「くそっ!むかつく野郎だ!!…、あいつには関わるなよ!!」

「………」






は女官に城内を案内してもらっていた。

「ここから先が、文・武将の方々が執務をしたり仮眠をする部屋がございます」

「へぇ…。私もいずれ執務とかってしたりするんですかね?」

「恐らく…。戦場に出たりしますと後の報告書など提出せねばなりませんから」

「そっかぁ…大変ですね」

武将はただ忠実に軍師の言う通りに働くだけのものではなかったと初めて知った。
その場で臨機応変に働かなければいけないし、軍なども整えなければならない。

私にそれが出来るかな…。


「あっ、申し遅れました。私今日から様付きでお世話をさせていただきます」

「えっ!私付き…ですか?……なんだか恥ずかしいですね」

がはにかんだような笑顔を見せると女官は笑ってお辞儀した。

様のような方は珍しいです。皆様、私たちがいるのが当たり前だと思ってなんでも…
っとと。……申し訳ありません。ご無礼を」

「いえいえ!此方こそ宜しくお願いしますね!!」

女官はもう一度丁寧にお辞儀をすると、そういえば…とに尋ねた。

「昨日の宴の終いに、凌統様が様をお抱きになってお部屋に運ばれてましたけど…。
お部屋が分からないとあちこち人に聞いて回っておりました」

「え……?」

は思わず足を止めた。
女官は歩きながら話を続ける。

「酔っててつぶれてるから部屋に運んでるんだ。と仰って…」

「!!…凌統様は今何処にいるでしょうか!?」

「え?この時間だと恐らく鍛錬所で兵士の訓練をしているかと…」

はそれを聞き終わらない内に走り出していた。
と、一度止まると振り返って

「あ、案内有難う御座いました!!」





まっずいなぁ…。

でも、どうして?私の事嫌ってるはずなのに…。
今は考えても分かんないよね。






「っ凌統様!!!!」

が叫んだ瞬間、鍛錬をしていたほとんどの兵士達が此方をみた。
また注目を浴びてしまって冷汗をかく

気まずくて、その場から動けないでいると凌統が耳の後ろを掻きながら
此方へ近寄ってきた。明らかに迷惑そうな、不機嫌な顔をしている。

「…何?」

「あ、えっと…昨日…潰れた私を部屋まで送って頂いたようで…その、
本当に、えっと…有難うございます…!」

ははっきり言葉が喋れずあちこちを見ながら言ったが、深く頭を下げた。

この人の前だと上手く喋れない。
凌統はわざと聞こえるような溜息を吐いた。

「それだけ?」

「…はい」

それだけ、とは酷い。

「この間のお返し。助けてもらったしね。まあ、あんなもんじゃ
借りを返した事になんてならないかもしれねえけど」

凌統は、片手の鍛錬用の槍棒で己の肩を軽く叩くとつま先で軽く地面を
掘っている。

じゃあ鍛錬の途中だから。といって凌統はに背中を向ける。

広い、大人の背中。
ついついその背中に見惚れていると、凌統がぴたりと止まった。

「…?」

凌統は振り返ると、耳の後ろを掻きながらに目を合わさずに言った。

「…あー…。あんた、今暇?」

「…?はい、一応…」

は曖昧な返事を返した。

「いや、暇じゃなきゃいいんだけどさ…一緒に鍛錬していく…か?」

あいつらが実力を見てみたいっていってんだよ。と付け加えた後に
「全く失礼な奴等だ」と独り言のように言った。

「……はい!!!」

きょとんとしていたの顔が笑顔でいっぱいになった。

「直ぐに得物を持ってきます!!」

嬉しそうに走って駆けて行く後姿を見ていると後ろから恨めしそうな
声がした。



「将軍…。俺ら何にも言ってないっすよ…」


「………さーてと、始めるか!」

部下の言葉を無視するとくるりと振り向き仲間のもとへと戻って行った。




また、ほんの少し…近づけたかな?