はじめて見た彼女は、まさに戦場で踊る舞姫だった。
はじめまして
もう、周りの戦いの声や得物が擦れ合う音なんて聞こえやしない。
只聞こえるのは自分の荒い息遣いだけ。
囲まれた。もう駄目なのか?
でも、こんな所で死ぬ訳にはいかないんだよ。父上の、仇が…。
来た。敵の動きが、時間がゆっくりと流れているように鈍く感じる。
しかし、自分の五感の動きは更に遅く感じて、このままでは防御すらできない。
手にしている得物にも力が入らない。
先程受けた背中の傷が、疼いて熱く熱を持っている。
が、その時、自分の上に小さな影が現れた。
女か?
その黒い影は宙を舞うように自分の前まで来ると持っている剣でその場の兵士達を鮮やかに薙ぎ払った。
剣舞…?本当に、そう思ったんだ。
「…大丈夫ですか?」
「……。あ、あぁ。ありがとな」
幼い。始めの印象はこれだった。自分と同じか、はたまた下か。
ぱっちりとした目に、漆黒の黒髪がとても綺麗に見えた。
凌統は言葉も出ずにその少女に見惚れていると、少女は訝しんで覗き込んできた。
「お怪我…してますよ?」
「え?」
言われて気が付いた。右腕に深い刺し傷みたいなもの。
もう、痛みなんか殆ど感じていない。
大丈夫だ。そういおうと思った。
でも、開いた口は言葉を発する事無く固まってしまった。
彼女の左腕には龍が彫ってあった。しかも、見覚えのある模様。
そして、腰には小さな鈴が二つ、彼女には不釣合いな程大きな剣の柄に
羽がぶら下がっている。
「…?」
「…お前、名前は?」
「私ですか?私はといいます」
そういってにっこり微笑んだ。やはり、似ている。
まさかな、そんなわけないと自分に言い聞かす。
仕草が似ていてたまたまあいつが持っているものを彼女も持っているだけだ。
それに、あいつに親族がいたなんて聞いた事ない。
まぁ、聞きたくも無いからあいつの話は聞かないだけなんだがな。
しかし、其れを裏付けるように大嫌いな奴の声が。
「おーい!!一人で突っ走っていくなって」
凌統は一気に不機嫌になり、奴が現れた方向と違う方にぷいっと顔を背けた。
「御免なさい。なんだか敵が群がってるのが見えたから」
「!凌統じゃねぇか。如何したんだ?」
「……お前の知ったこっちゃねぇだろ」
「ちっ。何だよ…。、今回の戦がお前の初陣だ!しっかりやろうな!」
「はい!兄様について行けるように頑張ります!」
『兄様…?』
「…兄様って」
「え?あ、私の姓は甘。甘寧の妹です」
「……」
くそっ。まじかよ…。
は凌統の表情を見て不思議そうな顔をした。
「凌統様?」
何で俺の名前を知ってるのか、そんな事は如何でもいい。
きっと目の前のこいつが言っていたんだろう。
「!そういえば腕の傷が…」
こうしている間にも、鮮血が腕を伝って地面にぽつぽつと落ちている。
は少し考えた末、自分の腰布を引きちぎって包帯の代わりとして、
凌統の腕に巻こうと手を伸ばす。
ばしっ。
一瞬、三人の周りの空気が固まった。
凌統がが自分に伸ばした手を払い落としたのだ。
「……」
「て、てめぇ!折角妹が…!」
「うるせぇんだよ!ほっといてくれ!」
甘寧と凌統が睨みあってる中、は何ともいえない顔をしていた。
兄様と凌統様の事は聞いていたが…。
やはり、親の仇の妹も同じく仇なのか。
「い、いいの兄様!私が図々しかったの!」
「…」
甘寧は妹の言葉に哀れむような視線を送った。
「……」
「…凌統様、ご無礼をお許しください」
「……いや…」
何だ?目が離せねぇ。この女は甘寧の妹…。なのに……
銅鑼が数回響いた。此れは呉軍の全軍突撃の合図。
「、いこうぜ!こんな奴ほっとけ」
甘寧がの肩をぽんっと叩くと我に返ったように瞬きをした。
凌統とは同時に目を反らすと、ばつの悪そうに俯いた。
「い、今行きます!それでは凌統様…」
もう一度ちらっと凌統を見てぱたぱたと甘寧の後ろに付いて行った。
「……。甘寧の妹のくせに礼儀良すぎだっつうの」
耳の後ろを掻きながら自嘲するように言った。
それにしても、謝ってねぇな。
「さあて、行きますか。…俺、……かっこわる」
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凌統大好き!!(何)
ヒロインチャンは甘寧の妹設定です。
ちゃんと設定考えてます。これから少しずつ出していきます(´∀`*)
続きますっ。
2005/3/9