「ぅわっ!!………ぃたたた…」

「…おい」

「何!?誰が学校に落し穴なんか作ったのよ!!幼ちい事するわね」

「…どけ」

「は?」






空から、少女が降ってきた。
少女からすれば運良く、呂布からすれば運悪く、少女は呂布の上に
落ちたのだ。
傍で真っ赤に燃えるような雄雄しい馬が地面を掘りながら鼻を鳴らしている。
「早くどけ」
「…誰あんた?」
呂布は自分の上に馬乗りになっている少女を一睨みすると、頗る低い声で言った。
しかし、少女は少しも怯む事無く下に敷いている呂布を見下ろした。
「あぁ、ごめん。下敷にしちゃったね」
そういうと身軽に立ち上がって制服に付いた汚れを叩いた。
そして「ん」といいながら呂布に手を出して立ち上がるのを手伝おうとする。
呂布はその手には目もくれず立ち上がると、少女を見下ろした。
夕日を背に浴びる呂布は逆光で顔の表情が全く分からない。が、それ以前に
呂布が大きすぎて少女がいる所は全て暗い影になっていた。
少女はほぼ真上を向くように見上げると呂布をまじまじと見た。
「あんた、本当にでかいね。2メートルあるんじゃない?」
「めーとる?…それより貴様、今空から降ってきたぞ」
「みたいね。ていうか此処どこ?」
周囲を見渡しながらいう。
「……下ヒだ」
少女は聴いたこともない地名に眉を寄せて訝しんだ。
先程まで居たのは確かに学校の校庭だったはず。
此処が本当に目の前で自分を見下ろしている男が言うように『下ヒ』という
場所ならば、何らかの理由で一瞬にして移動してきたようだ。



「……あぁ!!もう止め止め!!!!この際如何でもいいわ。ねぇあんた、名前は?」
「………」
呂布の目が一層細くなった。
呂布は少女を無視すると己の愛馬を呼び寄せた。
「…何よ!!未だ怒ってるの?無視なんて性質悪いわね。……あっ可愛いっ!!!!」
呂布が赤兎に手を伸ばす前に少女は真っ赤に燃えるような馬に駆け寄った。
呂布は驚いて少女を引き止めようとした。
「おい!!そいつに近寄るな!!蹴り飛ばされる…ぞ…」
少女は呂布の静止も聞かずに赤兎に近寄ると、鼻梁をゆっくりと撫でた。
「………」
少女はしきりに「可愛い!!大きい!!」を連発している。
赤兎は呂布以外に懐く事はなかった。…はずだ。
老若男女関係なく近寄ってきたものはその屈強な後ろ足で蹴り飛ばしていた。
蹴られた方は無事では済まない。死んだものもいるほどだ。
が、その赤兎が大人しく小さな少女に鼻を撫でられている。しかも、目をうっとりさせて。
「…赤兎」
呂布は少し悔しいような情けないような気になり、小さく溜息を吐いた。
「へぇ、この馬赤兎って名前なんだ。大人しいな」
少女は自分より目線が高い赤兎の目を見てにっこりと笑った。
赤兎は首を振って少女の頬に摺り寄せた。
「…名前はまず自分から名乗るもんだよね。ごめん」
少女は素直に謝ると身体を反転させて呂布の方へ改めて向き直った。
「あたしは、。貴方は?」
「俺は呂布、字は奉先だ」
「…字?…まぁ兎に角呂布ね!!」


呂布は赤兎馬を恨みがましくみると近寄って騎乗した。
鬣を軽く叩いてやるとぶるぶると鼻を鳴らす。
「……貴様、行くところは」
「うーん…。たぶん行くところも帰る所もないんだよね」
呂布はの言葉に驚いた。が、刹那考えた後、片手でを易とも簡単に
すくい上げると自分の前に腰を降ろさせた。
からは「ぎゃぁ」という言葉と共に抗議の声があがったがそれを無視した。
「行く場所が見つかるまで、傍に置いてやってもいい」
「え!!本当に?…でもなんで?」
「……赤兎がお前に懐いてしまっている。
それにこのまま貴様を置いていくと、赤兎に恨まれるからな」
呂布はそう言ってを見下ろすと薄く笑った。
は一瞬驚いて固まったが、満面の笑みで返した。

赤兎が一層、大きく鳴いた。







「でっけー!!これが呂布の城!?」
「あぁ。お前は不思議な言葉を使うんだな」
赤兎を走らせているときも「はえぇ!!」をくり返していた。
は城の城壁を目の前にすると、馬上ではしゃいで何度か呂布に肘打ちを
喰らわせていた。
もっと近くで見ようと赤兎から降りた。刹那、呂布と赤兎の視界からが消えた。
「!?」
視界を下へ移していくとは地面にへたり込んでいた。
「あれ?…腰が抜けたみたい。赤兎に乗ってたから気付かなかったけど」
は赤兎のあまりの速さに知らず知らずの内に腰を抜かしていたらしい。
自分が腰を抜かした事に気付かないなど、大物なのか、はたまた鈍くさいだけなのか。
恥ずかしそうに苦笑している。赤兎は首を伸ばしの背中を突付いている。
「あはは、…恥ずかしい」
は背中を丸めて顔を埋めてしまった。
呂布は聞こえないように笑うと赤兎から降りて、を抱きかかえた。
「ぎゃぁ!!」
「…少しは女らしい声を上げられないのか」
わざと溜息をついてみせる。
「……ねぇ、もうちょっとマシな抱え方はなかったの?」
「あぁ、済まん」
ちっとも悪びた様子はない。逆に楽しんでいるようだ。
呂布はを、俗に言う『お姫様抱っこ』ではなく、
『麻袋』のように右肩に抱えていた。
そのまま城門を潜って城内に入る。赤兎は二人の後ろを黙々とついて行った。

赤兎を厩に繋ぎ止めると呂布はを抱えたまま城中に入った。
もこの体勢には慣れてしまったようで文句を言う事無く大人しく呂布に
運ばれていた。。城主の帰りに諸将、文官、女官侍女達は頭を下げて挨拶する。
それをは珍しそうに見回していた。

「お帰りなさいませ」
「あぁ。この女は客人だ。室を与えて丁寧にもてなせ」
「はい」
呂布は侍女の一人に命令するとを降ろした。
「立てるか?」
「うんありがと。…ってあたしここまでしてもらう権利ないんですけど!!」
「煩い。俺の命令だ、黙って従え」
呂布はそこまで言うと大股で何処かへ去って行ってしまった。
その場に取り残されたは呆然と立ち尽くしてしまった。
侍女や女官達は呂布が見えなくなるのを確認すると
の格好を身を乗り出して珍しそうに見つめていた。
それはそうだろう。の格好はセーラー服でスカートの丈は甚だ短い。
この時世、まずこんなに露出した女人はいない。
しかも、呂布が初めて客人を、女を連れてきた。

女人を厚く待遇するのは―――あの人以来だ。

誰もが、そう思っていた。








「此処が様のお部屋で御座います。何か御座いましたら何なりと
お申し付けください」
案内をしてくれた同年代くらいの女官の女性に深く頭まで下げられてしまった。
こういうことになれていないはやはり気持ちの良いものではなかった。
「あの…。あたしと貴女ってあんまり年変わらないじゃん?『様』って止めてくれる…?」
「しかし…呂布様のお客様ですし」
「大丈夫!!ね?」
「ですが…」
女官の方も断固として譲らない。
は軽く息を吐くと、女官に向き直りにっこりと笑った。
「貴女が、あたしのお世話をしてくれるんだよね?なら、これからもっと
関わるわけだし仲良くなりたいじゃない?あたしも友達が欲しいわ。寂しいじゃない」
女官は困ったような顔をに向けたが、がもう一度にっこり笑いかけると
その困ったような顔ははにかんだ笑顔になった。
「では…よろしくお願いします!!私は弧千といいます」
「よろしく!!よ。



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やっちゃいましたっ!!呂布連載夢♪
別に特別好きなわけじゃない呂布を連載化したのはなんで?(聞くなよ)
設定がむちゃくちゃな気がしますが(気のせいじゃないよね)そこは
目を瞑って下さい★←(死)

12/24/2004
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