「馬超大丈夫?」

珍しく熱をだした俺。数日前から少し様子が変だとは思っていたが
まさかこんなにひどくなるとは。

「…あぁ。頭がいてぇ」

は今日久しぶりに休みなので家で稽古でもしようと思っていたが
馬超が熱を出したと聞いたので屋敷まで見舞いに来ていた。

「あの…侍女さんとか面倒みる人達は?」
「…いねぇ。ちょうど帰している」

は小さく溜息をすると馬超を覗き込んだ。

「しょうがないから今日はあたしが看病してあげる!」

そういうとぱたぱたと部屋を出て行った。
嬉しいような…複雑な気持ちだ。


今日の馬超はいつもみたいに金色の眩しい鎧は身に着けていない。
兜もなければ小手もしていない。寝着である。
いつもと違う馬超を見た。いつもの強気な馬超と違って意外な
馬超にちょっと内心ドキドキ。

暫くしてが戻ってきた。
手には濡れ布が入った桶と…土鍋を持っている。

「朝から何も食べてないんでしょ?お粥作ったから!
言っとくけど美味しいわよ」

からからとは笑うと馬超の側へ寄り上半身を起こす手伝いをする。
馬超は気だるそうに重い身体を起こすと「すまん」と呟いた。

「食べられる分だけでいいから。ゆっくり、ね」
「…あぁ。……だるい、食べさせて」

は吃驚して一瞬固まった。あの馬超が…こんな甘えた事言うなんて…。
馬超は「あ」といい口を開けてを促した。
少し顔を赤く染めて少しずつお粥を馬超の口元に運んでいく。







「もういらねぇ。ごめん、喉痛くて食えねぇ」

そういうと馬超は布団の中に潜り込んでしまった。
は持っていたレンゲを土鍋に戻すと濡れ布を搾り出した。

「馬超!顔出して。おでこ冷やそう」

は手際よく馬超に身の回りの世話をしていく。
意識の朦朧とする中で馬超はそれを見ていた。





「暫く寝なさい。起きてちゃ苦しいだけだよ」

は寝台の横の椅子に腰掛けた。今の馬超はあまりにも弱々しく見える。
戦場で鬼神の如き得物を振るっている彼とは誰も想像出来ないだろう。

「あぁ…。そうする。……
「何?」
「…ちょっとこっち来い」

馬超はごほごほと軽く咳をしながら手招きした。は首を傾げて何事かと
馬超の寝台へ近づく。と、その途端。右腕をぐいっと引っ張られたかと思うと
気付いたときには馬超の下に敷かれていた。

は何事が起きたのか把握できずにいた。病人の馬超にこんな力が出るのかと
冷静に考えていた。自分も一応武人なのだが…。
そして自分のこの状況と上で自分の顔をまじまじと見ているどこか艶やかな
馬超をみていると段々正気になる。

「…っ!ば、馬超!?何!?あんた何してんの!?」
「…わかんねぇ」
「………は?」

自分でも何とも間抜けな声だと思った。だって、馬超があまりにも拍子抜けな事言うから。
絶対今顔真っ赤だ。頬が火照っているのが自分でもわかる。目の前に居る馬超より。
何考えてるのよ、こいつ…。

…。一緒に寝よ。一人じゃ寝れねえ」
「・・・」

なんとも甘えた事を言う馬超。不覚にも可愛いとさえ思ってしまう、母性本能だろうか。
馬超の顔は熱のせいで真っ赤で、まるで駄々をこねる赤子のようだった。

そんな事を考えていると急に上から重みが圧し掛かった。馬超だ。
馬超はを大事そうに抱きしめると静かに熱っぽい寝息をたてはじめた。
一応馬超の腕の中でもがいてみるけど、その抵抗も虚しく。
病人の癖に何処からこんな力が出るのか、しかも寝ているというのに。


は抵抗を諦め馬超の腕の中に居る事にした。
夜になっても馬超は起きる様子がない。よほど安心しているのだろう。
家の者達が心配しているだろうなと思いながらも、この居場所が少し嬉しい。
このまま今日は寝ることにした。






 次の日―――――

「!!っうおぉ!!!」

耳元で凄まじい声を聞いては目を覚ました。
声が頭に響く。……だるい。

「なっ…ななな、何してんだお前!」

馬超は訳が分からない様子で慌てている。がばっと寝台から上半身を起こすと
横になって頭を抑えて眉を顰めているを見下ろした。
どうやら全快のようだ。

「なんでが俺の横で寝てるんだ!?」

……なんで?…何でだと!?覚えていないのかこの馬鹿は!!
沸々と怒りが沸いてきた。
は勢いよく身体を起こすと馬超に罵声を浴びせようと口を開ける。
…が、眩暈がして元の位置にぽてっと寝転んでしまった。
どうやら馬超の熱がうつってしまったようだ。
そして眉を顰めながら弱々しげに言った。

「…あんた。本当に覚えてないの…?」
「あ、あぁ。もしかして…俺が…?」

馬超は何も覚えていないらしく頭を抱えている。

「…が粥と桶を運んできてくれたのまでは覚えている。
それからの記憶が…ない」

………なるほど。そうか。私が内心ドキドキしていたのも
馬超の行為が少し嬉しかったのも、こいつには記憶に無い事で
無意識の内という訳か。


  治ったら殺す


の只ならぬ殺気を感じ取った馬超はその日は一日中彼女の
世話をしたそうだ。


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